自然素材の装い その3 ウール 

先ずは、ウールの元持ち主 羊さんのお話から始めましょう。
哺乳類、偶蹄目、牛科に属するこの羊からとれるウールは、有史以前から人類のお役に立っていたようです。羊の種類は、3000種ぐらいあるようですが、私たちの身近にある種はそう多いわけでは有りません。ウールと言えばやっぱり、オーストラリアというイメージがありますが、それは世界の33%を占める産出国である事からです。中でも全体の75%を占めるのがメリノ種で、衣料に最適、ソフトでしなやかな品種です。オーストラリアンメリノは、さらに大きく分けて3種類。ファイン・ミディアム・ストロングと分かれていて品質はファインが1番です。細くて長いのがよりよい事になります。

                                               

で、いつ羊さんが毛を刈らせてくれるかといいますと

春の出産時期を過ぎて、初夏の頃。ちょうど私たちも衣替えをしないといけない時期です。羊を育てる人から始まって、その毛を刈り取る人(1頭当たり3分ぐらいらしいです。)
品質管理・分類する人を経て仲買人の手に渡り、市場に出回ります。この段階では、WOOLはちょっときれいな綿のような毛の固まり(1俵=175kgぐらい)というだけで、買い手の手に渡っても様々な工程を踏まないと毛糸になりません。      
選毛、洗毛、ほぐし、……中略……糸紡ぎ、さらに撚りをかけ、蒸してと手間ヒマかけます。毛を刈ったら、洗ってすぐ紡ぐものかと思いきや、もの作りには、知恵と手間が掛かっておりますね〜。 
 
その昔、飛騨高山のある村で糸紡ぎをさせて頂いたことがあります。

そこで飼われていた羊の毛だったと思いますが、創刊号特集の綿のような固まりから手動の糸紡ぎ機にかけて毛糸にしました。初めてだった事もあって、手の感触も難しく、均一な太さにはなりません。太い細いの入り混じった味のある?!?毛糸だまが出来ました。(何玉できたか忘れましたが、……)その毛糸はちょっと脂っぽく、色は生成りというかアイボリーに近い白、それ以後糸紡ぎは病み付きにもならず全くしていませんが、おもしろい経験をさせてもらったと思います。1日、2日の糸紡ぎではセーターは勿論のこと、ベストもできない分量にもかかわらず、無謀にもジャケットの前身ごろにその毛糸を使い、不足分は買ってきたもので長袖上着は出来あがりました。作品は、いまいちでも自分の作ったものは、うれしくていっそう暖かさも感じつつ、着ていたと思います。今も確かにどこかには、あるはず……・。糸紡ぎはムズカシイ。


さて、天然素材WOOLの特徴はと言いますと、

1.冬暖かく(みんな知っての通り)夏涼しい(意外)。
繊維の1本1本が縮れており、このおかげで約60%もの空気を含み、暑さ寒さを遮る機能を持ちます。夏涼しい理由は、繊維を通して汗を放出し、蒸れを防いでくれるからです。

2.水をはじき、汚れにくい。
繊維の外側の細かい穴のあいた表皮により、水滴ははじき返すが、気体は通過させる
ので、じめじめ湿気を吸収放出してくれます。泥のような水溶性の汚れもはじいてくれる事になるし、吸湿性の良さが静電気による汚れの発生も抑えます。



3.
弾力性、吸音性に優れている。 断熱性の理由と同じで空気層が、弾力性を作ります。化合繊では、決して真似の出来ない複雑な形状が、音の反射をランダムにして、優れた吸音性につながっています。

4.燃えにくい
化合繊は火がつくと最後まで消えないですが、ウールは火を遠ざけると、燃え止まリます。髪の毛が燃えるのと同じタンパク質の臭いだけはどうしようもないですけど。
◆ 明治維新の一般人がまだ洋服を認められていなかった頃、『出火等非常の節の者は着用せらるべきこと…・』なんておふれが出ていました。ウールは消防服としてなら着てよかったのです。この燃えにくさから今も、ウールはより高い技術で加工され、消防服として活躍中であります。

5.染め易く、色落ちしにくい
高い吸湿性が染色をしやすく、色落ちをしにくくしています。染料はアミノ酸との相性により決まりますが、ウールは19種類のアミノ酸からできているため、割合どの染料とも合うようです。

6.抗菌作用、消臭機能あり
ウールは、羊の皮膚の変形で、元より、皮膚自体には免疫機能があり、ウールにも抗菌作用があることが分かってきました。アンモニアなどを吸着するなど消臭機能もあります。
◆知っているつもりで、わからない、天然繊維の奥深さかな!!

7.天然の空気清浄器!?
かの有名な有害物質『ホルムアルデヒド』をも吸着するらしいです。
◆ 詳しい情報がお知りになりたい方は、
 こちら  http://www.woolmark.gr.jp/mother  のホルマリンをご覧下さい。
 ホルマリンはホルムアルデヒドの水に溶けたものですよ。             

8 .汗冷えしない
ウールは、湿気をおびると吸着熱と呼ばれる熱を発生します。つまり、衣類でも布団でも汗をかいた場合に体を冷やさないので健康的です。

9. 中古不要ウールを回収して再利用できる。

10. お手入れ簡単洗えるウールも有ります。

◆ 表面をひっかかりのないよう、滑らかに加工することにより、洗濯による縮みを無くした製品も出回っています。セーターは、ごく当たり前で、近頃は洗えるスーツも登場してます。

特徴がわかった所で、お手入れ方法は?

お気に入りのをウールのセーター、コートが虫に食われてしまったなんてことも皆さんしばしば経験されていることでしょうが、どこがそんなにおいしいんでしょう。ちょっと横道にそれますが、衣服の害虫は、イガ、コイガ、カツオブシムシなどです。発生時期はいずれも、春から秋にかけて動物性の繊維(絹、羊毛など)に生息し、幼虫は繊維の隙間に入り込んで繊維を食べながら、成長します。最後のカツオブシムシなんかは、名前のごとく、カツオブシや煮干など動物性の乾燥食品を食べますが、衣類やカーペット(化繊でない)まで食料にしてしまう虫です。 このカツオブシムシはちょっとおもしろい性質を持っていて色に好みがあるのです。最も好むのが赤、ついでピンク、茶、青、黄、紫の順です。ちょっと変な色好みのウール虫なんですね。

 

動物性の繊維の場合、特にこの害虫から身を守る事が1番大切なお手入れ方法になるのではないでしょうか?これらの虫は、衣服についた食べ物のカスやシミを栄養として繊維を食べます。湿気も好きです。ですから、シミ汚れを落とす、乾燥させるが大前提で、しまう時に防虫剤と乾燥を入れます。虫も自然素材が大好きなのは仕方がありませんね。■





  

The Woolmark Company
            (愛知県一宮市尾張繊維センター内)   
    インテリア・テキスタイルマネージャー 浮洲和典様                取材にご協力して頂きまして、誠にありがとうございました。            最後に感謝の気持ちを込めて! 

*参考文献:『たのしい羊毛講座』 日本繊維新聞社 
      『ウールの話』 ダイヤモンド社