シリーズ第4回は、都市部住宅でも採用がみられる「越屋根」のメリットを考えていきます。

 暖められた空気の逃げ場

越屋根(こしやね)とは、 普通の屋根棟の上に一段高く設けられた小さい屋根、または、その小屋根を設けた屋根をいう。小屋根は換気(通風)および採光のために設けられるものである。越屋根の建物を越屋根造といい、わが国では養蚕、煙草農家の草屋根などに用いられてきた例もある。また、煙突のように室内で、暖房や炊事の際に、まきなどを燃やすことによって発生する煙抜きとして設けられた。(写真参照)その際の開口部分には、竹などが縄でスノコ状に縄で編まれたもの設置し鳥などの動物の侵入を阻止したりした。

最近では、都市部において、狭小敷地の室内の換気や採光のために設置されるケースが増えてきた。まず、換気(通風)についてだが、寄せ棟の屋根を採用すると、どうしても、屋根下の熱い空気が溜まり逃げ場を失うため、軒先や軒天での換気が必要となる。それよりも、一番熱の溜まりやすい屋根上部に、開口を設けたほうが何倍も効率的である。(もちろん、切妻の屋根でも使用される。)最近では、アルミのユニット化された越屋根を特徴とした住宅商品を販売するメーカーもある。また、採光のための機能はなく、換気扇や換気口のみ設けた越屋根もある。天窓でも、換気ができると思うが開閉式の天窓は、雨天の際などの開閉にリスクがあり、越屋根の方がより高度なアイテムといえるのではないだろうか。また、越屋根からの換気は、平面的な通風ではなく、上下の縦方向の通風ができるのがメリットである。

 採光と外観への変化

採光からの越屋根のメリットについてだが、越屋根の設置位置が建物の中央付近に作ることにより、外壁面より遠く暗くなりがちな部屋の奥が明るくなる。敷地がせまく、付近の建物が近接し、外壁面の窓からの採光が期待できないときには、より有効な手段となる。
天窓は、開口が屋根勾配と平行になるが、越屋根の開口は、垂直面となるために、季節により直射日光の差込が調節でき、夏季における採光は、越屋根の庇の長さや勾配によっても調整でき、熱環境負荷も調整しやすいメリットがある。
越屋根の開口部には、ルーバーを設けて、常に自然換気するケースや開閉式の窓をつけるケースがある。開閉式の窓の開閉方法であるが、木製建具で対応する場合は、回転窓や内倒しにすると、高所でも開閉が可能である。回転窓の場合は、左右に回転金物を付け、水平になるまで開口をあけることができ、ひもをつけて調整ができる。ただし、台風などの強風の際は、木製建具の開口部は、よく雨水の水切の詳細と強度を検討する必要がある。
アルミサッシは、ルーバー式窓が換気調整しやすく、オペレーターも、ハンドル式や、チェーン式の手動型や、電動式のものが組み込める。電動式の場合、自動に室内側の温度を感知し、高温になると開閉するタイプもある。また、雨天の際も雨水感知器を装備しており、自動に閉まってくれる。また、オーニング(すべりだし)のタイプでもオペレーターが付くものもあり、ルーバー式よりも断熱性能が高いため、断熱を望む方にはお勧めである。

越屋根は、外観上も、屋根の変化が望め、建物のアクセントとしても利用でき、小屋裏まで活用した計画をしたときには、天井高の確保も容易となるため、居室空間としての利用価値も高まる。
今後、予算が許せば、それみあったメリットを持ち合わせた越屋根が普及していくのではないだろうか。
(2003.01.07)